──その夜、セシエルはライカの寝室に顔を出す。

 寝る前には必ず「おやすみ」の言葉をかける事が日課になっているのだが、今夜はそれだけじゃない。

 ゆっくりと腰を落とし、顔を覗き込むセシエルにライカが目を向けると、その頭を優しく撫でた。いつもと少し違うセシエルに、ライカは怪訝な表情を浮かべる。

「友達を助けたんだってな」

「えっ!?」

 驚いて起き上がるライカをなだめるように、ベッドに戻した。

「ダグが来て、お前を怒らないでくれってさ」

「ダグが?」

 思いも寄らなかったのか、大きく目を見開く少年に、セシエルは微笑み頭を撫でる。

「友達を助けたい気持ちは、よく解った」

 お前は精一杯、考えて行動したんだな。

「うん」

 ライカは照れながらも、満面の笑みを浮かべて喜んだ。

「友達は大切にするんだぞ」

「もちろんだよ」

 そうしてライカを寝かしつけ、寝室をあとにする。

 閉じた扉を背に、仕事に行く前に仲直り出来て良かったとセシエルは安堵した。