月と太陽の恋愛関係

目を閉じる。


『サー…』

静かな風の音に、俺が寝ていたと言う事実を知る。


風が耳をかすめた。


サラサラとカーテンを揺らし、流れて行く風に俺は、くすぐったくて顔を歪ませた。



心地良い風の中。

俺の意識はもう、殆ど飛び掛けていた。


そして、次の風が吹いた時。


フワッ、と、どこからともなく甘い香りが漂い、俺の鼻をくすぐった。


甘い、と言っても香水等のようなキツく、強い匂いではなく、ほんのりと漂う、夜桜のような美しさと、優しさの両方を持った匂い。


俺は何だか目を開けてはならない気がした。


フッ、と風の動きが変わった。

そして若干の温かさ、と言うか生ぬるさを感じた。


俺は何となく分かった。

俺の横に居るのは神崎だってこと。


それが分かってても何もしない俺は一体…。


「クスッ…」

小さな笑い声が俺の耳のすぐ傍で聞こえた。

その瞬間、俺の中の何かが動き出した。


気付けばガシッ、と神崎の腕を掴み、キスをしていた。


戸惑うアイツは急いで保健室から姿を消した。