クロの甘い声も、
女の子だな、って思わせる動きも、
俺に応えようと必死になってるとこも、
顔を歪ませ涙を浮かべる瞳も、
全てが俺の欲情を掻き立てた。
夢中にさせた。
でも、何かが違った。
何も考えず、毎日のように新しい女を捕まえ、一夜限りの関係に日々快感を重ねていたあの頃。
でも、今日は違う。
俺の欲を全部吐き出しても、どこかスッキリしなかった。
心の中に靄が掛かったような、
俺が高校生になったからなのかも知れない。
知らず知らずの内に罪悪感を持つようになっていたのかも知れない。
でも、きっと理由はそれじゃない。
アイツの顔が頭をよぎる。
「神崎‥夜月…。」
空を見上げれば、月が俺を慰めるように、
癒やすように、
優しく輝いていた。


