あれはバイクで走っている時、つまりついさっきの事。


「パサッ」

何かが俺のポケットから落ちた。


俺はそれを拾うため、雄舞にバイクを止めて貰い、雄舞と共に拾いに行った。


そんなもの…拾わなくても良かったのに…



「おっ!
太陽、あったぞー!」

「あ、マジで?
サンキュ!」


はぁ…

今更後悔したって何したってもう遅い。


雄舞の手の中を見た瞬間、凍り付く俺の体。

「ほんと、あんがとな!」

そう言って手を伸ばすも、あえなく失敗。


俺の手は空を切り、雄舞の後ろに流れた。



そして、

振り返った時にはもう遅かった。


「おまっ、姫って…。」

「か、返せっ!」

もう一度飛びかかるがやっぱりよけられる。

そのまま俺の体は一歩二歩と前に出て、フラフラ、っとバイクに倒れた。


「愛しの姫へ

僕が君と出会ったのはそう、あの日…」


あたふたしている俺をよそに、手紙の朗読を笑いをこらえつつ始めた雄舞。


俺は成す術も無く、ただぼー、っとそれを眺めるだけだった。