月と太陽の恋愛関係


「こんばんは、王子様。」


そう言って近付く二宮は、笑っているにも関わらず、もの凄く怖い。

俺も笑顔を作るが、ズリズリ、と後ずさりする足がここから逃げたい、と訴えてくる。

その為、笑顔は引きつりに引きつって頬がピクピク痙攣し始める。



「そんなに俺が怖い?」

「さ、さぁ?」

はい怖いです。と言いそうになる口を必死に押さえやっと言えた言葉。

でもその言葉は余りにも無力で、次の二宮の言葉で粉々に打ち砕かれた。


「その顔、恐怖に満ちた顔が"怖い"って言ってるけど?」

う…

「いや、そんなことは「まぁ、あんな姿見ちゃったしね。

仕方ないっか。」

ないよ、と言おうとしたのに俺の言葉を遮りペロッ、と舌を出して笑った二宮。


と、突然表情を変え、

「あのこと言うなよ、

言ったら…



ぶっ潰す。」

それだけ言って公園を出た二宮。



その瞬間、俺は体中から、まるで風船から空気が抜けるように力が抜け、ヘタヘタ、っと地面に座り込んだ。

その時、小雨だった雨が大粒の雫となって頬に落ちた。


やがて雫は頬を伝い、地面に黒いシミを作った。