月と太陽の恋愛関係


『カチャ』

人が1人も居ないこの辺り。

昔は結構な人で賑わっていた、この住宅地も、時代という波に飲み込まれ、今では寂れたただの道となってしまった。



俺はまるで友達の家に初めて入る時のように緊張して、ドアを開けた。

玄関に入れば目の前には10メートル程の廊下があり、その先には二階へと上がる為の階段がある。


筈が、

日が落ち、暗くなった今、見えるのは自分から2~3メートル先の廊下だけ。


『パチン』


俺は廊下の照明を点けた。

が、何となく昨日のギラギラと輝く光の中に居た、二宮太陽を思い出してしまい、消した。


俺は玄関の鍵を閉め、暗い廊下を進む。

そして二階の自分の部屋へ、



15年間、この家に住んでいた俺。

暗い廊下を進むのは15年間の慣れで容易なことだった。



俺は風呂に入ろうと、タンスからTシャツとスウェットの下を取り出した。

それから階段を降り、2~3メートル先の風呂場へと向かった。