「えぇーこんな草ボーボーなとこで花火見るのぉ？

やづきねぇがかわいそー。」

着いたのは堤防。

確かコイツが言うように草が生い茂っている。


でも、こここそが俺の知る絶景ポイントなのだ。


「うるせぇな、音が嫌いなんだよ、俺は。」

「わぁ、さいてー。

ねっ？
やづきねぇ。」

「えっ？うん、いやその…。」

て言う訳で文句は許さない、と睨んでいる俺。


「そ、そそそんな事無いんじゃない？

ほ、ほら見てからじゃなきゃ分かんないじゃん！」


それに気付いたのか急いで否定している。
何を言ってるのかは分からない。

「そうだねぇ、やづきねぇ。」

「チッ、調子のいい奴…。」

「…」

この爺さんは子供か!?

今の時刻は六時五十分。

花火開始まで後十分。


遠くの方に見える灯り、あそこが会場だ。


後五分。


「あっ！ビニール袋ぉ！」

三分。

「うるせぇチーズ！

二分。

「…」

一分。


『ヒュー』

『ドドーン』


色とりどりの花が夜空に開く。

その光景はなんとも幻想的で…

「ちー、近くで見たかったぁー。」

「全く、僕もだよ。」

「うるせぇっつーの！」


もう、マジでやだ…
コイツら、主にチーズと爺さんの文句が聞こえる。


でも隣には嬉しそうに顔を綻ばせる夜月が居る。


「来て良かっただろ？
夜月。」

「うん、ありがとう！」

この笑顔…


「今度は近くで見たい。」

「やだね。」

やっと分かった気がする。


俺は…