いつの間にか時は過ぎ、夕方になっていた事に今更気付く。


もうそろそろ、アイツは帰って来るのだろうか。

どうしようもなくゴチャゴチャした頭の中を掻き分け、必死にアイツの影を探している。

見つかる訳も無い筈なのに、どうしても探してしまう。


「…ただいま‥」

だから聞こえた声にも気付けない。



ふと隣に人の気配を感じ、横を向く。


「…おい、泣いてんのかよ…。」

瞳からこぼれ落ちる雫。


「泣いてなんか…」


彼女は気付いていないらしい。

自分の目の下にそっと指を触れたかと思えば目を見開き驚いている。


「泣い…て‥る…?」

ほんとに鈍感な奴。


でもそんなところに胸のずっと奥を締め付けられる。


「ごめんな…」

だからこんなに素直な言葉を伝えられるんだ。