月と太陽の恋愛関係

「全く…。」

そんな光景に思わず口元が緩む。


俺にもし、おじいちゃんが居たら…、

きっと、あんな感じなんだろうね。



「カランコロン」


そんな自分の幸せな世界に入っていた時聞こえた音。

お客さんだ。


「ったく、夕方だってのに何でこんなあっちーんだよ…。」

あぁ、どうしてこの人は人の気持ちをこうもかきみだすのでしょか?


一瞬にして吹き飛んだ俺の妄想に対する、心残り、


それからコイツの声を聞いた時の心臓の跳ね方。


全てがコイツにかき混ぜられる。


こんな気持ち、何時からだろう?


気が付けばいつの間にかこうなってた。

「おう、夜月。」


ハァ…、人の心はどうしてこんなにも脆いのだろうか。

「おーい、聞いてっかー。」


心なんて無ければ、きっとこんな思いだってしない筈なのに…。

「あーもー、いい加減にしろよ…。」


何故、どうして、俺の頭にはそんな疑問ばかりが、


「ペチッ」

「ったぁー…。」


突然走ったおでこの痛みに、俺の頭の中にあった全てが吹き飛んだ。


「ったく、それ何回やったら気が済むんだよ。

っつか、帰るぞ。」

「はい?」

「だから帰るっつってんの。」

「いやいやいや」


それは駄目でしょ、マスター居ないし。


「いやいや、ちゃんと居るって。」


聞き慣れた声に後ろを振り向く。

「マスターっ!
い、いえ、何でもないです…。」


手と首を横にフルフル、と全力で振る。