「落ち着いたかい?
だったらこのエプロンを着けて私の手伝いをしておくれ。
そろそろ、一番目のお客さんが来る頃だからね。」
そう言ってエプロンを差し出した。
俺はそれを受け取りつつ、「はい」と返事をしようとした丁度その時。
カランコロン、と来客を知らせる音が聞こえた。
「さぁ、急いで。」
「はっ、はい。」
急ぐのだが、慣れないエプロンに苦戦してしまい、やっと着た頃には、もうオーナーがお客に注文を取っているところだった。
「すいません!」
急いで謝る。
でもそんな俺におじいさんは笑顔で言った。
「明日からはちゃんと素早く着れるようにね。」
その瞬間、このおじいさんには一生勝てない気がした。
って、一生戦う事なんて無いだろうけど…。


