「俺は…」

きっとあれしか無い。


「ごめん、何か面倒臭い質問しちゃったね。

答えなくてもいいよ?」

中々答えない俺。

それを分からないと思ったのだろう。


俺の答えを遮る神埼。

「いや、

俺は、
俺、月は皆を癒やす為に有ると思う。

人を優しく照らしてさぁ、太陽を休ましてくれてるんだと思う。」

「そっか…」

太陽が人を笑顔にする為にあると言うなら…

月はきっと、人を休ませるためにあるんだと思う。


俺の答えに少し疑問を抱いたような神崎の声が返って来た。

いつの間にか、背中から「スースー」と小さな寝息が聞こえた。


気づけば笑顔になってる俺。

「やっぱ、可笑しいよ…俺。」

ここがコイツの家だろうか?

俺が止まったことに気付いたのか神崎が目を覚ました。


それから神崎を下ろし、いいことを思い付いた。


これぐらい、いいよな?



「おじゃましまーす」

神崎の家にズカズカ上がる俺。

それを止めようと必死な神崎。


「うっわ、汚ねぇ…」

「うわぁー!!
見んな、見んな、見んなぁ―――!!!」


そんな神崎を無視してすぐ目の前にあったドアを開ける。

ほんとに汚ねぇ…


埃塗れの部屋の所々に蜘蛛の巣があって、とてもじゃないけど入れない。


「俺の部屋で…駄目?」

見られた事が嫌だったのだろう。

目にほんの少し涙を溜めて訴える神崎に


「お、おぅ…」

そんな返事をしてしまった。


『グゥゥゥゥ――――――…』

腹の音と共に赤くなる神埼。


やべぇ…そそられるし…