「おっと。悪いな。」


「おっと。悪いな。じゃない!危ないだろうが!しかも俺の車だぞ…」


「あぁ。わかってる。」


「余計たち悪いわ!」


悪い、本当に。

安全運転なつもりだったんだ。

いったいどうしたんだ。

俺は。

今日は帰ってすぐ、寝よう。

ぐっとハンドルを握る手に力をこめ俺はアクセルを踏んだ。


静かになった車内。

エンジン音や外の喧騒が遠く聞こえる。

ちらりとバックミラーを除くと九鬼島のうかない表情がみえる。

なんだよ、具合でも悪いのか…。

そんな心配が頭をちらついて、

またひとつため息をついた。