あ然とする俺たちを無視して、詩織は部屋のすみに並んだ芋焼酎を手に取った。
「いや、お前さっき、そろそろ寝ようって――」
「うるさい! つべこべ言うなっ!」
「はい、すみません」
鼻息を荒くして、なみなみとグラスに焼酎をつぐ詩織。
その姿はすでに親父の貫禄だ。
「さあ、飲み比べするよ」
そう言って当たり前のように詩織が出したのは、水も何も入れていないストレートだった。
「いや、あの、詩織さん? 飲み比べって……」
「はいはい。あんたが酒弱いのなんか知ってるよ。でもね、たまにはつぶれるのわかってて挑んでみろってのよ」
「……」
「ちなみにあんたが負けたら、明日のリハーサルの前に家帰って、まなみちゃんを誘い出して来なさいよ」
なんて無茶苦茶な言い分。
けど、俺もトオルも反論できなかった。
詩織の迫力に圧倒されていたのか、それともちょっと、不覚にも胸を打たれたのか。
詩織は自分の焼酎をぐいっと飲み干した。
そしてグラスを床にたたきつけて、勇ましく俺を見た。
なかば、ヤケクソ。
俺は目の前に置かれたグラスをつかみ、勢いにまかせて流し込んだ。
――10秒後のことは、もちろん覚えていない。
気がついたらすずめがチュンチュン鳴いていた。
「……朝?」
まぶしさに顔をしかめながら起きると、まず、床の上でいびきをかいている詩織の姿が目に入った。
そしてそのかたわらに転がっている焼酎のビン。
こいつ、全部飲んだのかよ。
「起きた?」
トオルに声をかけられた。
「ああ、うん。……えっと、俺」
「一杯でダウンしたんだよ。二日酔いは平気か?」
「全然平気。なんでだろう」
そう言うと、トオルはしめしめと笑った。



