もちろん、そんなことばかりして毎日を過ごしているわけじゃない。

あわただしい日々の中、俺たちはイベントの準備を着々と進めていた。


「20分のショーってさ、短いと思ったけど案外長いよな」

「そうそう。実際にプラン立てるとなるとね」


技術の乏しい俺たちには、できることは限られている。

たった20分の持ち時間でさえもてあましてしまうのだ。


「ケイは何かアイデアとかある?」

「……アイデアってほどじゃないけど」

「いいよ。それでもいいから、とにかく出し合おう」


毎日がとにかく忙しくて、一生懸命で、たまにバカやって。

カレンダーを見ることを忘れるくらい、充実していた。





「ついに明日だなあ。リハーサル」


2月最初の土曜の夜。トオルが感がい深げに言った。


「ま、普通はリハにそこまで気合いなんか入らないんだけどな」

「うちらの場合は、ケイの恋がかかってるからねー」


俺より気合いが入っているふたりに、ついつい苦笑してしまう。


そのとき、廊下からおばさんの声が聞こえた。


「トオル、お友達来てるわよ」


俺たちは顔を見合した。

誰だろう……クラスメイト?


トオルはおもむろに立ち上がり、ドアを開けた。


「あ」


見事に重なった俺とトオルの声。

詩織だけは、そこに立っている人の顔に見覚えがなくて、首をかしげている。


「……武史君」


声の出ない俺の代わりにトオルが言った。