「はあ? アホか、お前は帰れ」
「やだよ。あんたらだけ集まってずるい! いやらしい!」
「どこがいやらしいんだ。お前がいる方がよっぽどいやらしいっつーの」
そんな俺たちのバトルを、部屋の主であるトオルはケロッとした顔で眺めている。
「まあ、俺はどっちでもいいよ。イベントの準備のためって言えば、親も了解するだろうし」
「ほらね」
「おい、トオル!」
「まあまあ、いいじゃん。てことで、さっそく準備に取りかかるか」
「え〜。明日にしようよ。それよか今日は飲もっ!」
「お、いいねー」
「……」
ほんと、いい加減な奴ら。
けれどそのおかげで、張りつめていた心が少し和らいだ気がした。
もう後戻りはできない俺と、相変わらずお気楽なトオル、詩織。
3人で過ごす日々は、急速に過ぎていった。
トオルの家族は全員酒豪で、今では詩織と大の仲良しだ。
下戸だった俺もそれに付き合わされて、ちょっとだけ飲めるようになってきた。
そういえば、うちの家族もみんな酒が強いよなあ。
俺だけ飲めないからいつも大変だったっけ。
……まあ、あいつが一緒に住み始めてからは、下戸は俺だけじゃなくなったけど。
なんてことを、時々思い出したりもした。