そんな俺の心なんか、もちろん兄貴は知らないんだろう。
「お前も行くよな?」
「……ああ」
小さく返事して、俺はため息をついた。
「まなみ、このかき揚げ最高だよ。食べてみな」
「あ、ありがとう」
「まなみ、エビのしっぽ食わないならちょうだい」
「あ、うん」
さっきから兄貴とまなみは、ずっとこの調子。
父さんが連れてきてくれた天ぷら屋は味も雰囲気も最高だったけど、テーブルの向かい側で繰り広げられるこんなやり取りに、俺の気分は下がりっぱなしだった。
なんか兄貴のやつ、いつにも増してまなみにベッタリだ。
まなみも嫌がらないし、いったいどういうつもりなんだよ。
――『それってもしかして、まなみちゃんは完全に武史君を選んだってことじゃないか?』
トオルの言葉がよみがえった。
信じたくない。
でも、プラスに考えようと頑張ってみても、そのたび打ちのめされるんだ。
近づいたと思えば、離れていってしまう。その繰り返し。
しばらくするとまなみが席を立った。
トイレの方に歩いていくまなみの後ろ姿を目で追って、
30秒後、俺は立ち上がった。
トイレは店をいったん出て、廊下を突き当たり右。
広いビルの中にあるから、廊下はけっこう長かった。
待ちぶせしていると、クラスの奴らが自慢げに話していたことを思い出した。
合コンなんかで気に入った女の子がいたら、その子がトイレに立ったときに廊下で待ちぶせしとくんだって。
なんかそれに近いことしてるみたいな気分で、嫌だなあ。
……そんなくだらないこと考えていたら、俺の視界に見覚えのある靴が入った。



