吹き出す詩織の後ろから、「メリークリスマス!」とテレビの声が聞こえている。 「……なあ。もしも俺が“いい奴”をやめて、兄貴の彼女を奪うって言ったら、お前はどう思う?」 詩織はしばらく沈黙をはさんで、こう言った。 『そんなの、応援するに決まってんじゃん』 「……ありがとう」 俺は電話を切った。 昨夜はさんざんだったけれど、あれはイブの出来事。 まだ、クリスマスは終わっていないから…… 本当に欲しいものを、欲しがってみてもいいはずだ。 そうだろ? と、俺は自分自身に問いかけた。