目を合わさずに言った俺に、まなみは小声で「うん」と答えた。
俺たちのやりとりなんかもちろん気づかずに、みんなは盛り上がっている。
そんな団らんに割って入ったのは、高らかに響くインターホンの音だった。
「おっ、誰だ? もしかしてサンタさんか?」
ちょっと酔っ払った父さんのつまらない冗談に、
「え? サンタさん?」
とエミは顔を輝かせ、ゆいさんの手を引いて玄関に走っていく。
「こんな時間に誰かしらね?」
父さんと母さんも後に続いた。
その10秒後だった。
「あ……ああーっ!」
みんなの叫び声が、玄関からこだました。
「な、何!?」
「急にどうしたの!?」
あわててダイニングを飛び出す俺たち。
玄関には、ぼう然と立ち尽くすみんながいた。
俺の視線はその後ろ姿を通り越し、信じられない人の姿をとらえた。
「あ……」
まなみが声にならない声をもらす。
突然の訪問者はまなみを見ると、パアッと満面の笑みを咲かせた。
「ただいま、まなみ!」
――ありえない。
最初からありえないこと続きの恋だったけど、今回ばかりは本当にありえない。
なんでよりによってこんな日に、兄貴が帰ってくるんだよ。