まなみが行きそうな場所なんて、俺には見当もつかない。

だけどじっと待っているなんてできなくて、とにかく思いつく限り探してまわった。


あいつが通っている大学の近くの、食堂や喫茶店。

駅のホーム。

繁華街。

でたらめに探してみるけれど、見つかる気配はない。


夜の空気をふたつに割ってバイクを走らせると、火照った頬がみるみる冷えていった。


そういえば俺、風邪引いてたんだっけ。

けれど今は、体が熱いのか冷たいのかわからない。

さっきまで感じていためまいや頭痛も、どこかに飛んでしまった。


心にあるのはまなみのことだけだった。


――『そんなに心配だったら自分から電話してみたら?』


エミが言った言葉。
その通りだと思う。


電話、してみようか……。


ごちゃごちゃ難しいことは、もうどうでもいい。


この恋をあきらめるとか追いかけるとか、
今はそんなの、どうでもいいんだ。


ただ、朝に見たまなみの後ろ姿があまりにも寂しげで。


とにかく今はあいつの声を聞かなくちゃ、不安でしかたないから――。



バイクを止めて、ポケットの中の携帯を握った。

それと同時に着信音が響き、俺はあわてて携帯を取り出した。

「あ……」

着信画面を見て、思わず声がもれる。

表示されていたのは、“母さん”の文字。