悲しかったのは、比べられたことじゃない。

悲しかったのは――兄貴と過ごした月日の重さを、突きつけられたことだ。

俺じゃまだまだ思い出が足りないって、思い知らされたことだ。


恋は思い出だけで成り立つわけじゃないってことくらい、わかってる。

けれどその場その場の気持ちだけで選んでいけるほど、俺もまなみも子供じゃない。

あのふたりには、俺の知らない月日の積み重ねがあって……。

それを今、俺があがいてみたところで、一気に飛び越えられるわけじゃないんだ。


「くそっ」

はき捨てるように言って、壁を蹴った。

そんなことしても当然イラ立ちは消えず、足の先に鈍い痛みが残っただけ。


情けない。

結局俺は、あきらめることも、手を伸ばすこともできない、半端なガキじゃないか。