東京を離れている間に、いつの間にかカレンダーは12月中旬に入っていた。

テレビをつければ特番が流れ、街で耳にする音楽は心を躍らせるクリスマスソング。

俺が長野から戻って、もう1週間。

12月24日が、すぐそこに迫っていた。



『ケイ、今年のクリスマスはどうすんの?』

久しぶりに電話をかけてきたトオルがたずねた。

「別に予定はないけど」

『んじゃ、聖夜の合コンとかどうよ?』

「興味なし」

『えーっ。またかよ、付き合い悪いなあ』

ブーたれるトオル。
俺らの会話なんて相変わらずこんなもんだ。

『どうせまなみちゃんとも進展ないんだろ? そろそろあきらめろって』

「は?」

お前に関係ないだろ、と言おうとしたとき、一階から母さんの声がした。

「ケイー。ご飯できたよー」

『お前の母ちゃん、相変わらず声でかいなあ』

電話口でトオルが笑う。

「んじゃ、そういうことだから、またな」

携帯をベッドに放り投げて、俺は一階に降りた。



あきらめるとか、あきらめないとか、その基準って何だろう。

求めないことが“あきらめる”なのなら、俺はもう、あいつをあきらめたのかもしれない。

けれど忘れるということが“あきらめる”なら?
……当分、俺には無理っぽい。


「あー、腹減った」

ぼやきながらダイニングに入る俺に、まなみは無邪気に話しかける。

「あ、ケイ。今日はお鍋だよ!」

テーブルの上の土鍋を指差して、はしゃぐまなみ。

「お~。美味そうだな」

「ね!」

その笑顔を見るだけで胸の痛みを感じる俺は、やっぱり当分忘れるなんて無理だと思う。