自販機の中の飲料を補充して回るんだ、とバイトの内容を説明した。
まなみは相づちを打ちながら、時々「すごーい」なんて大げさに言った。
「なんかけっこう重労働って感じだね」
「いや、そうでもない。俺は運転しないし、自販機の補充もほとんど手伝わないから」
「じゃあ何してんの?」
「もうひとりのバイトが補充してる間、駐禁きられないように車の中で待機してんの」
その言葉に笑うまなみ。
「えー、それって楽すぎない?」
「まあな」
俺はあせっていた。
こんな他愛ない会話をしている間にも、時間は過ぎていく。
エアコンの風に揺れるカーテンの向こうは、町明かりもほとんど消えた夜の景色。
このまま朝なんか来なければいいのに……。
「俺、待機するのがけっこう得意なんだと思う」
窓枠を見つめていた視線をまなみに移し、俺は言った。
「待機に得意も不得意もあるの?」
相変わらずまなみは気楽な様子で笑っている。
「気の短い奴がやったら、すぐに車ほったらかしにするじゃん」
「ケイは?」
「俺は、気が長い方だから……」
だから、の先をたずねるように、首をかしげるまなみ。
「運転席が留守の間、ちゃんと守るよ」
胸がぎゅっと痛くなった。
自分の発した言葉が、こんなにも自分の胸を痛くさせるなんて、びっくりした。
そう、ずっと……俺なりに守ってきたんだ。
それ以外にできることなんかなかったから。
「……って、思ってたけど」
そう言って俺はベッドから立ち上がった。
壁際に立ち尽くすまなみの体が、ビクッと震えた。
俺は一瞬躊躇して――
そして、彼女の方へ、一歩近づいた。