《新着メール一件:お母さん》
ちらっと見えた画面の文字に、俺の心臓も大きく鳴る。
まなみはメールを読む覚悟ができないのか、しばらく画面とにらめっこしたまま止まっていた。
そして、深く息を吸ったかと思うと、強く携帯を握り締めて、
……ピッ。
そのメールを開いた。
「――…」
一点を見つめたまま、動かないまなみの表情。
メールの内容は俺の角度からは見えない。
何て書いてあるんだ?
そう聞こうとしたとき、まなみの瞳から涙が一粒落ちた。
「……え。どうだった……?」
最悪の予感が胸に広がるのを感じながら、俺は恐る恐る尋ねた。
けれど何も答えずに、携帯を握り締めたまま涙を流すまなみ。
「大丈夫か?」
「――……」
まなみはゆっくりと顔を上げて、
そして、涙で濡れた頬を、にっこりと微笑ませた。
「おばあちゃん、……ただの捻挫だって」
俺はたぶん、ぽかんと口を開けてまぬけな顔をしていたと思う。
だって、絶対に、もうダメだって思っていたから……。
――『ただの捻挫だって』
まなみの言葉を反すうし、そしてその意味がわかってくると同時に、温かいものが胸にこみ上げた。
「……よっしゃーっ!」
ガッツポーズで叫ぶ俺。
まなみや周りの人がびっくりしてこちらを見た気がしたけど、そんなの気にせず何度も声をあげた。
「よかったあー。まじで安心した」
固く握った両手が、震えているのに気づく。
安心したとたんに力が抜けて、俺はその場にしゃがみこんだ。
「まじで……まじでよかった」
喜びが言葉になって出てくるのを、止めることができない。
自分は本当に嬉しいときこういうリアクションをする人間なのだと、初めて知った。