空港のロビーは人でごった返し、騒然としていた。

ひと目で何かあったとわかる光景だ。

スーツケースを持ったサラリーマンが、航空会社のカウンターに文句を言っている。

不安が胸をかすめた。

俺は電光掲示板を見上げ、赤く光る文字を無意識に読み上げた。

「大雪のため……欠航?」

信じたくない現実が、そこにあった。

まなみが息をのむ音が聞こえた気がした。

「あの、欠航って、一時間後の札幌行きも飛ばないんですか?」

航空会社の制服を着た女性に、俺は半ば詰め寄るように尋ねた。

「申し訳ありません」

「いや、でも今すぐ北海道に行かなきゃいけないんですけど」

「お客様……」

「お願いします」

こんなこと言っても、どうしようもないことくらい、わかってる。

けれど俺は自分の行動を止めることができなかった。

頭を下げるその人に、俺はひたすら食い下がった。

そのとき、俺のコートを後ろから引っ張る人がいた。

「……もういいよ。仕方ないもん」

ほとんど泣きかけの声で、まなみが言う。

「でも、お前」

「大丈夫だから」

そう言ってぎこちなく笑うまなみの顔は、ちっとも大丈夫じゃなさそうだ。

完全に、強がり。
こんな顔見たくないのに、どうしてやることもできない自分がふがいない。

あきらめかけたそのとき。

雑踏に交じって、携帯の着信音が聞こえた。

「……おい!メール!」

まなみのバッグの中で、携帯が光っている。

「えっ!?あっ」

まなみはハッとした顔をすると、大慌てで携帯を取り出した。