……ここは、やっぱり俺が紹介する立場なんだよな?

「あ、こいつは、俺が通ってる専門学校の同級生」

とりあえず詩織のことをそう紹介した。
まなみについては、何と言って紹介すればいいのか、ちょっと迷うから。

「詩織です。よろしく」

「初めまして。まなみです」

さっきまで店員と客という関係だったふたりが、俺を間にはさんで自己紹介をしあう。
少し奇妙だけど、それなりに微笑ましい光景だ。

ところが詩織は、“まなみ”という名前を聞いたとたん、急に含み笑いをして俺を見た。

「ふーん。まなみちゃんかー」

やばい。
こいつ、何か要らないこと言わないだろうな。

ギクッとなる俺に、楽しそうな顔の詩織。

そのとき、タイミングよく他の席からオーダーの声がかかった。

「あ、はーい」

俺たちの席から去っていく詩織に、内心ホッと息をつく。

ああ……危なかった。
俺が学校で話してるまなみのこととか、ここで暴露されちゃ、たまらないからなあ。

なんか、安心したら急に喉が渇いてきた。

「それ、オレンジジュース?」

カウンター上の細長いグラスを指差してたずねると、まなみは小さくうなずいた。

「どうせガキだなーとか思ってんでしょ?」

「いや、俺もあんまり酒飲めねーし。一口ちょうだい」

ただ喉を潤したくて、特に深く考えず俺はオレンジジュースに手を伸ばした。

「あ……!」

ジュースが喉を通る音に、まなみの声が被る。
まなみの顔は、白熱灯の灯りの下で、みるみる赤く染まっていった。

「ん?どした?」

と首をかしげた直後に、ハッと気づく俺。

赤面の理由は、暖色系の照明のせいじゃなくて。
もしかして……間接キスのせい?

まなみの真っ赤な頬をみていたら、急に自分の行動が大胆なものに思えて、俺は恥ずかしさで逃げ出したくなった。

けれど次の瞬間まなみが放ったのは、思いがけない言葉で。