詩織の運転する車でしばらく走り、俺達は彼女の両親が営むペンションの前で降ろされた。

そこはスキー場から程近く、俺の視界にはすでに雪山が広がっていた。

「おおー!すげえ景色!」

と声をあげるトオル。

「でしょ?」

詩織は得意げな表情で腕を組む。


目の前に圧倒的なスケールで存在する、その白い山を見て、俺は確信した。

……絶対、こんなとこで偶然会うとか、ありえない。

いくら明日にはまなみがこっちに来るからって、遭遇することはまずないだろう。

ちょっと、いや、かなり残念。

「ん?どうした?ケイ」

顔をのぞきこんでくるトオルに、俺は「別に」と答える。

「それより早く滑ろーぜ」

「おう!」

手早く準備をすませ、俺たちはスキー場に向かった。


まあ、これで何も考えず、純粋に旅行を楽しめるわけだし。

それに、もしまなみに会ったとしても、あっちだって友達といるんだから一緒に行動するわけにはいかないし。

なんて自分を納得させながら、俺はひたすらスノーボードに熱中した。


そんな、あきらめというか開き直りは、翌日あっさりとくつがえされてしまうのだけれど……。