目的地に着いて、先輩は車を停めた。
「んじゃ、浅田くんはこのまま乗っておいて」
俺を助手席に残し、先輩はドアを閉める。
「うぃーす」
と俺は適当な返事をして、頭を下げた。
ここでの俺の役割は、ただ助手席に残っておくこと。
要するに駐禁対策ってやつだ。
自販機に缶ジュースを補充する先輩を遠目に見ながら、俺は背もたれに体重を預けた。
……すげえ平和。
自分の部屋にいるときの、あの落ち着かない気持ちに比べたら、外でバイトしている今がすごく平和。
俺がこんなに毎日きつい想いしてるとか、あいつは知らないんだろうな。
そう、あいつは……
あいつ……
って、え?
「――まなみ?!」
勢いよく身を乗り出して、フロントガラスにおでこをぶつけた。
痛みに涙目になりつつも、俺はガラスの向こうに釘付けになる。
まなみがいた。
なんで?
なんでこんな所にいる?
しかもよく見ると、まなみはひとりじゃない。
隣には、髪を明るく染めた男。
「……小池?」
なつかしい名前が口をついて出た。
20メートルほど離れたその姿を、俺は目を細めて見つめる。
「あれって……小池じゃん」
まなみの隣にいるのは、なぜか俺の高校時代の同級生だった。
いや、同級生、なんて言葉も使いたくないくらい、大っ嫌いな男。
平気で嘘つくし、頭ん中はヤルことしかないし、あいつに泣かされた女子が何人いたか。
しかも勝手に俺と友達だなんてホラ吹いて、他校の子をナンパしたりして――
……って、そんなの今はどうでもいい。
その小池とまなみが、なんで一緒にいるんだよ?