「うわっ!もうこんな時間?!」


テレビで星占いが始まったのを見て、まなみは素っ頓狂な声をあげた。

「やばいよー。遅刻しちゃう。朝から講義あるのに」

「じゃあなんで悠長に朝メシ食ってたわけ?」

「だって……」

唇をとがらせるまなみに、俺は大きくため息をついた。

「バイクで送ってやるよ。しょうがねえなー」

ほんとはラッキーって思ってるんだけどね。


 *  *  *


――こいつの大学って、うちからけっこう近いんだ。
残念。

なんて考えながら校門前で渋々バイク止めてるあたり、俺も相当まいってるな、と思う。

「朝からごめんね。ほんと助かった」

脱いだヘルメットを俺に手渡して、無邪気な笑顔でそう言うまなみ。

「ありがと、ケイ」

「……いや」

俺がバイクにまたがったまま、なかなか走り出そうとしないから、まなみは不思議そうに首をかしげた。

「あ……あのさ」

俺は、とっさに湧き上がった言葉を口にしてしまう。

「帰りも、迎えに来てやろうか?」

「え……っ?」

うわ、すっげえ困った顔。
飲み込んだ息を吐き出すのすら忘れたように、まなみは俺の顔を見たまま固まってしまった。

「……冗談だっつーの」

そう言ってあいつの頭を小突き、エンジンをふかす。

……あーあ、何やってんだろ、俺は。
相手は兄貴の彼女だぞ?

罪悪感よりも大きく育ったドキドキに、自分でも少しビビってる。


――て言うか。

そもそも、どうしてこんな展開になったんだっけ?