「ケイ、あんたって遊んでいそうに見えるのに、けっこう固いんだよね」
柿本はからかうような口調で言ったけれど、その表情はむしろ、“見直した”という笑顔だった。
俺と同い年の女子なのに、どこか小学生の男の子を思わせる柿本。
たまにこうして俺らの会話に割り込んでは、下ネタにも平気で参加する、専門学校で知り合った数少ない女友達だったりする。
柿本は白い歯を見せつけるように笑って言った。
「で、ケイの童貞は、そのお兄さんの彼女とやらに捧げるの?」
「アホか。てか童貞じゃねーし」
「ムキになるとこが怪しいよな」
トオルが言って、柿本が大きくうなずく。
俺は便所に行くと言ってその場を去った。
正直に言うと……
トオルたちの言うことは当たっている。
いや、もっと正直に言うと。
つまり俺は、トオルが言う通り、女に対して免疫がない。
嫌いじゃないけど苦手なんだと思う。
あんなのはタイミングの問題もあるし(と思いたい。)
けど、これからは兄貴を抜きで、まなみと隣同士になるわけだ。
そのとき俺はどんな反応を見せるのか。
今までのサンプルが自分にはないから、分からない。
で、ビビってる。
めちゃくちゃビビってる。
……まあ、もし本当に兄貴が帰ってこないのなら、まなみはうちから出て行くだろう。
それまでの辛抱だと思った。
ところがその日。
家に帰ると、
母さんはいつもの「おかえり」の代わりに、こう言った。
「ねえ、ケイ。武史がいなくても、まなみちゃんはここに住めばいいよね?ケイもそう思うでしょ?」
……はあ?!