「ごめんね……。遅くなって」
言葉をかみしめるように、まなみが言った。
「本当に、遅くなってごめんね」
まったくだ。
ここまで来るのにどれだけ時間がかかっただろう。
だけど今は、顔さえもはっきり見えないこの暗闇で、
俺の腕の中に彼女がいる。
「いいよ。……俺は、気が長い方だって、言ったじゃん」
まなみの頬にそっと手を置いた。
彼女も背伸びして、少し顔を近づける。
今すぐ伝えたい気持ちがいっぱいあるのに、なんだか言葉にならないんだ。
だから、もっと近づきたい。
縮まる距離。
かすかに触れ合う前髪。
そして――
「……コングラチュレーション!!」
唇が触れる寸前で、止まった。
「……」
「……な、何?」
気づけば俺たちはスポットライトの下にいた。
あっけに取られ、体を離すことすら忘れていると、上から信じられないやりとりが聞こえてきた。
「バカッ、詩織! ちょっと早えよ!」
「ごめん! タイミング間違っちゃった」
「せっかくケイのファーストキスを演出してやろうと思ったのによお〜」
見上げてみると、そこにはバカ面で叫ぶトオルと詩織の姿。



