誰も、いないはずだったのに。
拍手なんて起こることのない、空白の客席だったのに。
なのに、
小さな拍手が響いて――
「まなみ……っ」
消えかけた光の中に、彼女の姿を見つけたんだ。
「……嘘だろ」
思わずこぼれるつぶやき。
だって、兄貴に会いに行ったんじゃ?
幻でも見たように俺は目をこするけど、そこにいるのは、確かにまなみで。
今すぐにでも、会いに行きたかったまなみで……。
「どうやら泣き上戸のケイを見るチャンス、逃しちゃったみたいだね」
詩織が残念そうに言った。
「でもよかったね、ケイ。花代が無駄にならなくてさ」
……まったく、ふざけた親友だ。
俺は小さく笑った。
20分のショーが終わった。
真っ暗になったスタジオで、唯一の観客が、いつまでも拍手をしてくれていた。
「まなみ」
真っ暗な空間で、俺は一番呼びたかった名前を呼ぶ。
「……来てくれたんだ」
「うん」
静まり返ったスタジオは、俺たちの声を反響させた。
ゆっくりと鳴る俺の足音は、まなみとの距離が縮まる証。
「俺、お前は絶対に来ないと思ってた」



