「きれいだな……」


誰に言うでもなくつぶやいた。


これを、まなみに見せたかった。

あいつに見せたら絶対喜んでくれただろう。

すごいねって。
きれいだねって。

俺以上にはしゃいだだろう。


……弱ったなあ。
こんなに胸が痛くなるなんて。


失恋の傷は時間が解決してくれる、と誰かが言っていた。

でも、今の俺は到底そうは思えない。

時間って、どのくらい? 
具体的にいつだよ。

こんなにも泣き出したいくらい、辛くて、苦しくて。

ほんとに忘れられるのかよ。


なのに、変だな。


後悔だけはしていないんだ。


まなみを好きだった気持ちに、これっぽっちも後悔はない……。



照明が照らす反対側に、ひまわりの繊細な影ができていた。

光の方からはあの影は見えないだろう。


俺も、いつもそうだったな。
ふとそう思った。


彼女の笑顔が見たくて、彼女を必死で照らそうとして。


だけどそうやってできた彼女の影は、俺の場所から見えていなかった。


もっと、彼女ごと、
全部を照らしてあげればよかったんだ――。





最後の音楽が、もうすぐ終わる。

ステージを包む光が徐々に小さくなっていく。

「……ケイ」

詩織の人差し指がまっすぐ客席を指した。