すると、エセルは小刻みに震える肩を押さえながら、引きつった顔で下に向けて指を指した。


その"下"を見たレオルとフェリアは硬直した。


下は崖になっていたのだ。


底は見えないぐらい奥底にあるようだ。


あと一歩エセルが進んでいたら今ごろ三人共、奈落の底にいただろう。


レオルが悲しい目をしながら崖の底を見つめた。


「"迷いの森"。それはこの崖から落ちたり――」


自分たちの立っている所の傍を見る。


「耐え切れなくて自らの命を絶ち、帰ってくることが出来なくなった者たちのことだったのか……」


レオルの横には自らの剣で自分の体を刺したまま横たわっている兵士の白骨化した死体があった。


エセルもフェリアもそれを見つめる。


しばらくした後、エセルが低く落ち着いた声で言う。


「そして森の主に殺されて帰ってこられなかった者たちも――」


エセルは悲しい瞳で大きな爪でえぐられた木を見つめた。