「って感じかな…。」


女の子の名前は高岡萌花(タカオカモエカ)
俺と同じ学校で同じ学年だった。
女に興味がない俺は
同じ学校なのに知らなかった。
高岡は、野球部に彼氏が居た。
けど、記念日だった今日
野球に専念したいという理由で
振られたらしい。

その野球部の彼氏というのが

──祥平さんだった。



「祥平さん彼女居たんだ…」


俺がそう呟くと高岡は
ふんわりと笑って答えた。


「祥くんは、野球一筋だから…
彼女いるって知られたくなかったんじゃないかな。」

「しかも今日記念日って…
俺さっきまで祥平さんと自主練してたのに…」


俺がそう言うと、高岡は
「やっぱりね」と言った。


「祥くんは萌花より野球を
取ったんだよ…。分かってたけど辛いな…(笑)」


強がりながらも笑う彼女を見て
俺は何だか胸が苦しくなった。

「祥平さんに…言ってやろっか?」

「ううん。もういいの。」

「萌花が居たら迷惑なんだよ。
祥くんには…野球頑張ってほしいし…辛いけど諦めるから。」

「……。」


高岡の言葉に俺はただ、
黙るしかなかった。

祥平さん。俺、今だけは
祥平さんが分からない。

野球一筋なとこ、
野球が大好きなとこ
すごく尊敬してる。

でも…こんなにも祥平さんを
思ってくれる人が居るのに、
それを手離すなんて
そんなの間違ってるよ。