天使という名のハンター

「頼む」

 そんな声が耳に届いたと同時にリボルバーが投げられ、それを掴み取ったセシエルは視線を合わせた。

 敵の攻撃が一瞬、止んだ刹那にセシエルは両手に構えたハンドガンを連射しベリルが飛び出す。突然の猛攻撃に、怯んだ敵の腕や肩にベリルの銃弾がめり込んでいく。

 男たちは呻き声をあげて武器を放り投げたり床に転がったりと次々に倒れていき、残ったミハイロヴィチの前にベリルは悠然と立った。

 蛇に睨まれたカエルよろしく、無表情に見下ろすベリルを呆然と眺める。

「悪魔め──」

 凄みにも欠けるが空威張りが通用するはずもない。悔しげに睨みつけ観念するかと思いきや、素早く向けた銃口はベリルにではなくセシエルにだった。

「──っんな!?」

 咄嗟のことで動けないセシエルの前にベリルが割り込み、右肩に銃弾を受ける。

「おい!?」

 セシエルはベリルの行動に驚きながら、二発目を放とうとしているミハイロヴィチにすかさず銃口を向けて引鉄を絞った。

「悪あがきしやがって」

 眉間を貫いた銃弾は男の息の根を止めた。