「まったく。なんだってこんなことになってんだ」

 セシエルは、ぶつくさと文句をたれながらハンドガンを握る。

「自分で招いておいてよくも言う」

 しれっと放たれた言葉にうぐぐと喉を詰まらせた。

「さすがの天使も女性には弱いとみえる」

「言うな」

 俺だって自分がここまで馬鹿だとは思わなかった。困っている人間がいると黙っていられない性分(しょうぶん)が行き過ぎただけだ。

 それにすぐさま「行き過ぎた……」と自分で復唱し、情けなさにがっくりとうなだれる。

「よくも信じ切っていた」

「お前の名前が悪い」

 顔をしかめて言い返すと、ベリルが怪訝な表情を浮かべた。

「悪魔のベリルなんて、どう考えても悪人につける名前だろうが」

 ベリルの行動によって名付けられたものだと理解すればなるほど、納得のいく名前ではある。