さらに目視で確認するため、二人は扉の壊れた入り口の両脇に立ち、慎重に中の様子を窺うとベリルの推測通りに五つの影が浮かんでいた。
ベニヤ板の張られた窓から差し込む陽の光は微量で、室内は薄暗くセシエルは目を凝らした。
何年も前に引き払われたオフィスには、必要のなくなったデスクと椅子が幾つか散らばっており、両端の壁には金属製の棚が一つずつ置かれている。
どうやら、ミハイロヴィチはいないようだ。
二人ではさすがに音を立てずに五人を倒すことは難しい。どうしたもんかなとベリルに視線を送る。同じことを考えているのは当然なことながら、ベリルから感じられる意思は自分とは異なるものだった。
ベリルの視線にセシエルはピンときて頷き、階下に降りるとベリルは上に続く階段の手すりに身を隠す。
一階に降りたセシエルは、二階の入り口に向かってそこら辺のゴミを投げた。もちろん響いた音は室内にも届き、五人の影はざわつく。
しばらく見合っていた影は小声で会話をしたのち、あごで示された二人が様子を探りに部屋から出てきた。下に仲間がいることは知っているため、階段を降りることなく声を張り上げる。



