天使という名のハンター

「よく手入れされている。問題はなさそうだ」

 P8と呼ばれる9ミリパラベラム弾仕様のUSPをセシエルに返し、ナイフの手入れを始める。

「ビルは何階建てだ」

「四階建て。一階はレストラン。二階から上はオフィスだったそうだ」

 それほど大きい建物ではないらしい。

 潜伏先が掴めたのは、「変な奴らが入ってきた」と、廃ビルにたむろしていた薬物中毒者や、寝泊まりしていた路上生活者たちが愚痴をこぼしていたからだ。

「生死は問わない」

「解った」

 あえて言ってくれるのは有り難い。これで気兼ねなく闘えるってもんだ。

「ところで。不死ってことは、不老か?」

「何故だ」

「ジジ臭いから」

「お前よりは若い」

「んな!? おまえ、いま何歳だ」

「三十歳」

「くそ!」

 俺より七歳も若いのかよ!

 悔しがりながら廃ビルの十数メートル先で停車する。車から出る前に間取りや人数、ミハイロヴィチの容姿などを再確認し建物に近づいた。




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