天使という名のハンター

「んあ!? あれは比喩じゃないのか!?」

 驚きのあまりハンドルを取られて車を止める。

「おい。俺をからかっているんじゃないだろうな」

「そこまでユニークではないよ」

 いや、もう充分お前はユニークだ。そんなことを思いつつベリルを凝視する。

「急いでくれないか」

 奴に逃げられてしまう。

「誰だ?」

 とりあえず再び車を出す。言われた場所は住宅街の一角だ。

「ロイを殺害した首謀者」

「なんだって?」

 ──デイヴィッドの上司がロシアのテロ組織とつながっていて、その上司が研究所で開発中のデータをテロ組織に渡そうとしていることを知ったデイビッドがアビゲイルに連絡を取った。

「テロ組織? なんだそりゃあ……」

 大事(おおごと)になっているじゃないかと眉間に刻んだしわを深くした。