観光地なだけあって人が多く、いくらベリルが目立つ容姿でも、これはかなり難しい。観光地にいるとも限らないのだから、街中を歩き回るはめになる。

 セシエルは悲壮感を漂わせながら捜索を開始した。

「それにしても──」

 あちこちフラフラしやがって、なんなんだあいつは。

 そんな腹立たしさと同時に、自分のように世界を巡ることが好きなのだろうかと少しの親近感が湧く。けれどそれをすぐに振り払い、絶対に見つけてやるという気概(きがい)で歩みを進める。

 ところが、そんな気概は何処(どこ)へやら。セシエルは捜索にかこつけて観光地を回っていた。

 手始めに「ムルデカ・スクエア」を探し、およそ452メートルの超高層ビル「ペトロナスツインタワー」を見上げて、大型ショッピングモール「スリアKLCC」の吹き抜けを眺める。

 楽しんでいる場合じゃないというにの、ついつい足が向いてしまう。