そういうことで、キースは気軽にベリルと電話のやり取りが出来るまでになった。ベリルからの信頼は他の傭兵の間からも絶大な信用を得られるらしく、複数回の要請を受けたキースはそれなりに顔が広い。
どちらかと言えば厄介がられる自分とは大違いだなとセシエルは眉間のしわを深く刻んだ。家は倉庫代わりでほとんど帰っていないし、家族もいなければ妻子も恋人もいない。
家族や恋人もいないという部分ではベリルと同じでも、稼ぎと顔の広さは雲泥の差だ。政財界にも強いパイプがあるとか、とんでもない世渡り上手だな。
アンジーに受け渡すまでの短い間の印象たが、あんな調子で人望が厚いっていうのも不思議でならない。
俺は友人と言ったらキースの他には数人くらいで金もなければ、ましてや富豪の知人も権力者に顔見知りすらいない。
いや、FBIにはいくらかいるかもしれない。色々と面倒を起こして、煙たがられているだろうがな。ハンターなんだから警察やFBIに目を付けられることなんて当たり前なことだ。
なんだったらCIAにもリストに入れられている可能性がある。
「……ええい。考えるのはやめだ」
段々、自分が情けなくなってきた。
まずは、いまの仕事をこなすことが先決だ。
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