天使という名のハンター

「捜索依頼──これか」

 依頼主はマーク・ウェイブル。行方不明の息子、デイヴィッドを探してくれと依頼をしている。

 ビルは軍人だった時の伝手(つて)を利用して探偵業をしていた。なるほど、顔の広い奴なのか。パソコンを見ると、同じ内容が書かれたページがある。

 どちらかが消えたときにと、しっかり予備を作っているのは流石(さすが)だな。

 特に大きな怪我もしていないビルが軍を除隊したのは、病気の母を亡くしたからだ。母親の体が弱いことを知りながら傍にいることもせず、派遣先で母の死を知らされた。

 後悔はビルの心を蝕み、ほどなくして軍を除隊した。しばらくは仕事にも就けず、引きこもりの毎日だったが妹の助けもあって探偵業を始めた。

「苦労人だな」

 思い出してつぶやく。

 ひと通り見回し、荒らされていないことから仕事絡みじゃないようだと推測した。しかし、それ以上は解らない。

「俺は探偵じゃねえんだぞ」

 頭をかきながら、データを移したUSBと書類を手に建物から出た。