セシエルは「すぐに返答はできない」と、一週間以内には連絡する約束をして、その間に彼女について調査を行う。前回の二の舞はごめんだ。
──とはいえ、アンジーの時の失敗を思い起こせば、どうしてあんな情けない行動に出たのか解らない。考えられることと言えば、彼女が俺好みだったことだろうか。
アビゲイルを調べたが、アンジェリーナのような嘘は吐いていないようだ。彼女の兄は本当に行方が知れず、姿を消してから一ヶ月ほどになるらしい。
彼女の兄の名はビル・フォスター。元陸軍で今は探偵をしている。
行方不明になる前に、とある夫婦から息子の捜索依頼があったとか。その息子を見つけたと夫婦に連絡があって直ぐ、ビルは姿を消した。
普通に考えれば、その息子が関係しているんじゃないかとなるだろう。
「まずはビルが受けた依頼の詳細だな」
ビルの事務所がある建物を前に肩をすくめた。
事前に建物を管理している会社に連絡をして立ち入りの許可をもらい、受け取った鍵で扉を開く。
一ヶ月のあいだ主人のいなかった部屋はそれほど埃っぽくもなく、窓の隙間から差し込む陽射しが久方ぶりの訪問者により舞い散る埃をキラキラと照らしていた。
明かりを付けてデスクを漁りつつパソコンを起動させ、幾つかの書類に目を通す。



