「そんな馬鹿な」

 セシエルはスマートフォンの画面に険しい表情を浮かべた。

「本当に殺し屋だって?」

 キラー・ローズと呼ばれ、金さえ積めばどんな理由であろうと、相手が赤子だろうと依頼を受ける。セシエルとは対極(たいきょく)にある人間だ。

「どっちが冷徹(れいてつ)なんだよ」

 深い溜め息を吐き肩を落とす。

 だったらどうして、彼女はあいつ(ベリル)を捕まえようとした。いや、何故、自分で捕まえなかった。どうして俺に嘘を吐いてまで依頼をしたんだ。

 自分では出来ない理由でもあるのか。

 いくら相手が優秀な傭兵とはいえ凄腕と言われていた彼女(アンジー)が、わざわざハンターを雇って捕まえさせるなんて妙だ。

 もっと調べたい所だが仕事もしないと明日の飯も危ういな。さすがに情報屋を使いすぎた。