天使という名のハンター

「ありがとう」

 言われて目を丸くした。

 まさか礼を言われるなんて誰が思う。両手を拘束しているからバランスが悪くなるんでシートベルトをしたまでだ。

 転がってあちこちぶつけられては困る。そんな言葉で俺が心を許すとでも思っているのか。

 どうにも気にくわないまま、運転席に乗り込みエンジンをかける。

「名前を聞いていなかったな」

「クリア・セシエルだ」

 名前くらいは教えてやる。

「流浪の天使か」

 ぼそりとつぶやいたベリルに目を細めた。俺のことを少しは知っているようだ。

「彼女からはどう聞いている」

「気まぐれに人をなぶり殺す悪人だとさ」

「そうか」

 ベリルはそう言ったあと、沈黙した。