相手も近づいてくる人影に気付いたのか、顔をこちらに向けて無言で見つめている。

 山岳地帯用の茶色いミリタリー服に身を包み、その格好に不似合いなほどの美貌がセシエルを迎えた。

 ムカツクくらい綺麗な奴だ。

 なんなら写真なんかよりも見惚れる。そこでふと目の色を見て、そういえばコロンビアはエメラルドの産地でもあったなと思い起こす。他にはコーヒーとバラがある。

 セシエルは少し荒くなった息を整え、逃げずに待っていたベリルに鋭い視線を送った。

「ベリル・レジデントだな?」

「何か用か」

 抑揚のない声が返ってくる。それに苛立ちを感じながらも写真を足元に投げ、それを拾い上げたベリルの眉間にはしわが刻まれる。