飛べないカラスたち





「兄さんが家を出てって、両親が離婚して、母親は仕事でずっと家に帰ってこないんだ」



「じゃ家でずっと一人か?そりゃ辛いよな」



セイがジュースを手渡しながらそう呟いた。


お菓子なんかも広げて、ここが裏路地でなければ普通の雑談会である。


そのお菓子やジュースが万引きしたものであったり、盗んだお金で買ったものであることを知ったのは彼らとつるむようになってすぐのことだった。


それでも自分の痛みを理解してくれる人間はこの二人しかいないルックは彼らの傍に居続けた。


世間で言う『間違い』だったとしても、自分は間違っているとは微塵も思わなかった。


『間違い』だという人間に、暖かい家があり、家族があるように、ルックたちの暖かい家や家族は血の繋がらない少年二人と汚い路地裏だった。


顔も合わせない、会話もしない、何も知ろうとしない親と、顔をあわせて、会話をして、沢山のことを聞いて知ってくれる赤の他人とを比べてみたところで答えなど明白である。


カインは学校に帰るとすぐに荷物を置いて裏路地で過ごすようになった。


教えてもらった万引きの方法を駆使して、お菓子やジュースを盗んでは三人の雑談会で食べる。


監視カメラの死角はどこか、次の狙い目はどの店か、そんなことも話すようになり、バイクにも乗らせてもらった。


折り紙で綺麗に鶴を折っていたその手は、恐る恐るバイクのハンドルを握ったり、会計を済ませていない商品を隠し、前を歩くお年寄りのバッグを奪い取るために使われた。