飛べないカラスたち





「いい?これからは外交長官補佐として、私たちの役に立って。貴方を助けるためには、これしかないのよ」



「クロウ……、助けて、クロウ…」



強引に、女は腕を掴んでこの場から引き剥がそうと、そのうるさいヒールを地面に叩きつけながら歩く。



「クロウ、ねぇ…!!置いていかないでよ…、僕だけ置いて行かないで!!」



ざわ、と声が響いた。


それは何かを示した言葉ではなく、一人一人が、一文字、ないし一言呟いたその塊だった。


一瞬で、周りの気配が変わる。


その変化だけで、何があったのかわかる。


女は振り返らずに、言った。



「しぶといわね、何発喰らったと思ってるの?」



「ははっ…下手くそが、…一発も心臓(コア)に当たってねぇじゃねぇかよ…」



掠れた声で笑いながら、身体を起こしたクロウは、それでも相当なダメージを喰らっていた。


口からは真っ赤な血が、まるで内臓のような真っ赤な血が、吐き出されて、その呼吸はか細く、荒く、途切れ途切れに、繰り返されていた。



「…ルック、…を…離せよ…」



笑い声を抑え、掛かる前髪の隙間から、女を睨みつけた。


掠れそうな声が届いたのは、その雰囲気に凄んだ大勢の人間が一言も言葉を発さなかったからだろう。


恐ろしいほどの血液が身体中から無遠慮に流れ続ける。


腕を伝って、背中を、腹を、足を、頬を、血が、止め処なく。


それでも。


拳銃を構える乾いた音が響く。


クロウの拳銃が。


女からは溜息が漏れる。


面倒だと言いたげに。


それでも、見逃すわけにもいかない。


即座に拳銃を取り出し、女は振り返りざまに撃った。


クロウのその心臓を、誤差もなく。真ん中を。