「クロウ……」
銃弾は受けていないにも拘らず、胸が壊れそうなほど、痛かった。
痛くて痛くて、胃の中のもの全てを吐き出しそうなほど胸が締め付けられた。
倒れたときに打った腰よりも、擦った手よりも、痛くて。
重たい、青年の重みは、無遠慮に小さな身体に圧し掛かっていて、いつだったか昼まで寝続けたときにふざけて乗られた時のようだ。
今は、そのとき浮かべていた意地悪そうな顔など、何処にもない。
「クロウ、…待って…待ってよ」
呼吸がうまく出来ない。
息が、まるで固形物になったかのように、咽喉の奥で詰まっているようで、苦しい。
「計算どおりね。……あの子を連れて行って頂戴。改心させて、外交長官補佐にします。保釈金も私が払うわ」
部下の一人がその命令に、ルックへと近付く。
その瞬間に、男の脳天を、槍が貫通して、男の短い悲鳴が響いて、液体の滴る普通すぎるおぞましい音が微かに耳に届いた。
宇宙服のようなものを着た男たちがぞろぞろと、窓から出てきてはルックに近付く。
槍の衝撃など、感じないかのように、いとも簡単にルックは押さえつけられ、地面に頬を擦りつけた。
レイヴンの槍も、簡単に取り上げられ、ナイフも身体中を探られて、短刀ごと、取り上げられた。
ルックにもたれていたクロウは、その身体を地面に強かに打ちつけて、転がっている。
女はヒールを鳴らしながら、小さく息をつく。
そして男たちの手からルックを引き取ると、ルックを立たせて、その頬の汚れを軽く撫でて落とした。


