飛べないカラスたち

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耳を劈くほどの銃声は、平和そうな街中に響いたのだろうか。


世界はこんなに歪なのに。


歪んだ空を異常とは思わず。


鳥の飛ばない空に疑問も抱かない。


平和そうな顔をして、気付いていないだけで、この世界は確実に狂っているのに。


家族と一緒に幸せそうに過ごしている人間に、友人と談笑している人間に、人生を嘆いている人間に、聞こえたのだろうか。


銃声も、叫び声も、大切な人の呼び声も。


こんな血塗れた世界と関係のない人間は大量の血も、その匂いも、火薬の匂いも、酷い怪我も、拳銃の重たさも、ナイフを人間の身体に突き刺す、柔らかくて重たいあの感覚も全て知らないまま幸せに、時にそれなりの悲しみと直面しながら過ごしていくのだろう。


今まで生きてきた道には、普通の人なら卒倒するかもしれない、痛みしかなかったかもしれない。


それでも、痛みの多かった、日々でも、血塗れた、『カラス』だった頃が一番幸せだったと、胸を張っていえる気がした。


例え今、耳元に掛かるか細い息が、途絶えたとしても。